インタビュー記事:美ら島法律事務所(横江弁護士) IT導入活用事例

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インタビュー記事:美ら島法律事務所(横江弁護士) IT導入活用事例

那覇市に拠点を構える「美ら島法律事務所」。代表を務める横江弁護士は、一般民事から刑事事件、さらには子ども支援活動に至るまで幅広い業務に携わっています。2021年頃、ITコーディネタ沖縄会員の勧めで沖縄県の補助事業(小規模事業者のIT導入補助金)を活用し、事務所の業務効率化を目指してクラウドサービスや業務管理システムを導入しました。本インタビューでは、法律事務所としての活動内容やIT導入の経緯・効果、さらには生成AIの活用状況について伺いました。

インタビュアー:ITコーディネータ沖縄広報委員会・新井良直

事務所の概要・活動のモットー

幅広い分野での法的サービス

美ら島法律事務所は、一般的な離婚や相続、債権回収、企業法務、刑事事件など、多岐にわたる法律相談・訴訟対応を行っています。特に中小企業への支援を重視し、契約書チェックや労働問題などもカバー。依頼者との”向き合い方”を重視し、「親しみやすさ」「フットワークの軽さ」「熱意ある対応」をモットーに掲げています。

子ども支援活動

横江弁護士がライフワークとして取り組んでいるのが、児童虐待や非行、貧困など困難な状況にある子どもたちの支援です。2016年にはNPO法人「子どもシェルター沖縄」を立ち上げ、理事長としてシェルターの運営に尽力。保護先が見つからない子どもたちに一時的な居場所を提供し、次の生活拠点へつなぐ活動を続けています。

IT導入の背景

導入のきっかけ

業務が増えるに伴い、これまでのエクセルや紙ベースの管理では、電話対応のメモ漏れや、顧客案件の記録が属人的になりがちでした。そこでITコーディネタ沖縄会員の勧めで2021年頃、沖縄県の小規模事業者向けIT導入補助金を利用し、「kintone(サイボウズ)」や「フリー(勤怠管理・労務管理)」を導入することを決意。ITコーディネーター沖縄の支援を受けながら、どのような仕組みが法律事務所の業務に合うかを検討し、システムを作り込みました。

導入システム

1)労務管理クラウド「フリー(freee)」
– 勤怠データをオンラインで一括管理
– 社員の出退勤や給与計算のミスを削減
2)業務管理システム「kintone(キントーン)」
– 顧客管理、案件管理、立替金台帳、電話メモ管理など合計8種類のアプリを構築
– 社員それぞれがリアルタイムでデータを共有できる仕組みを実現

実際の活用状況と効果

kintoneの活用アプリ

フリー(freee)の活用

導入メリットと変化

AI活用への取り組み

ChatGPTや音声認識サービスの活用

横江弁護士は「まずは触ってみること」と考え、ChatGPTを試験的に活用。会話内容の要約、文章作成の補助、法律用語の下調べなどで可能性を感じ始めています。今後は音声認識ツール(例:clovanoteなど)でヒアリング内容を文字起こしした上で、AIに要約や論点整理をさせることで、書類作成や事実確認の効率化を図りたいと検討中。

司法のデジタル化への期待

裁判手続きのオンライン化は進んできたものの、まだまだ紙の書類が必須になる場面は多いのが現状。今後は法的根拠の検索や、裁判所への提出書類のデジタル連携など、さらにIT・AIを活用できる領域が広がることを期待している。

今後の展望とメッセージ

さらに進む業務効率化とサービス向上

美ら島法律事務所では、kintoneやフリーなどのクラウドツールを使いこなし、現在も大きな不都合なく運用中。今後は入力や要約といった時間のかかる作業をAIに任せ、弁護士・職員がより高度な相談対応や戦略立案に注力できる体制を目指します。

「まずはやってみる」の精神

横江弁護士曰く、「ITを導入してみるとその便利さに驚く。知らないままだと”必要ない”と思いがちだが、実際に触れてみると業務の効率化やサービス品質向上を強く実感する」とのこと。結果として時間短縮だけでなく、依頼者とのコミュニケーションや業務管理の正確性も高まり、事務所全体の生産性向上につながっているそうです。

追記1:検索生成AI「Felo.ai」の活用

法律専門用語への正確な対応

弁護士業務では法律特有の用語や判例名、論点などを調べる機会が多いが、Felo.aiでは専門用語を正しく認識し、回答に反映してくれる。一般的な生成AIに比べ、法律分野向けの検索がより信頼性をもって実行できる点は大きな強み。

根拠の明確化(論文・文献検索)

単に要約や文章生成を行うだけでなく、どのような参考文献や論文をベースにしているかが分かりやすい。裁判所への提出資料や説明文書を作成する際、裏付けとなる論文・判例を素早く探し、引用する作業が効率化できる。

今後の活用

裁判官に説明するための概念整理や、依頼者に対する法的根拠の提示資料を作成する際、Felo.aiで検索・要約した内容が使えそう。ChatGPTと併せて使うことで、より多角的な視点の情報収集が可能になり、最終的に弁護士として独自の判断を加えれば十分活用できそう。

横江弁護士は「思った以上に法律専門の文献・判例検索にも使える手ごたえがある」と語り、今後もFelo.aiの機能をさらに深堀りしたいとの考え。特に「法律家が使いやすい仕様」が整えば、裁判資料作りやクライアントへのレポート作成がますます効率化する見込み。

追記2:若い頃からの原体験──中学時代に芽生えた「弁護士になりたい」という想い

美ら島法律事務所の横江弁護士は、中学3年生の頃、社会科の授業を通して「水俣病裁判」の話を初めて知りました。社会科の先生が公害問題や裁判の意義を熱く語っていた様子に大きく感銘を受け、「社会のために働く弁護士って、ものすごくかっこいい仕事だ」と感じたのが原点だったそうです。

子ども心に「困っている人を救いたい」という思いが芽生えたことが、結果として現在の弁護士活動、さらには子どもの支援活動へとつながっています。離婚や相続などの日常的なトラブルから、シビアな少年事件・児童虐待案件まで幅広く受けているのも、当時に抱いた「法律を使って社会を少しでも良くする」という初心が根幹にあるからです。

「水俣病裁判」のように、社会問題を正面から取り上げ、弱い立場の人たちの声を広く伝える姿勢は、横江弁護士の人柄を象徴するエピソードです。「法廷で戦うプロフェッショナル」というだけでなく、「子どもたちが安心して暮らせる社会づくり」にも情熱を注ぐ姿が、まさに中学時代からの夢をずっと育み続けてきた証とも言えます。